「法定開示書面」の大切さを理解しよう~その①~
2024年05月30日
法定開示書面って何だかご存知ですか。フランチャイズ加盟を検討されている方の中に、法定開示書面の存在自体を知らない方がたくさんます。法定開示書面はこれからフランチャイズに加盟しようとする方にとってとても大切な資料で、重要な情報源です。是非、法定開示書面についての理解を深めてください。
それでは、法定開示書面とは何かについて説明しましょう。
国は、中小小売商業振興法という法律で、フランチャイズ本部に対して、加盟希望者とフランチャイズ契約を結ぶ前にチェーン概要と契約の主な内容などを書面で説明するように義務付けています。この書面のことを法定開示書面と言います。
フランチャイズ本部が法定開示書面で開示しなければならない事項は以下になります。
チ |
本部事業者の名称・住所・従業員数・役員の役職名及び氏名 |
本部事業者の資本金・主要株主・他の事業の種類 | |
子会社の名称及び事業の種類 | |
本部事業者の直近3事業年度の賃借対照表及び損益計算書 | |
FC事業の開始時期 | |
直近の3事業年度における加盟者の店舗の数の推移 | |
直近の5事業年度において、FC契約に関する訴訟の件数 | |
契 |
営業時間・営業日及び休業日 |
本部事業者が加盟者の店舗の周辺の地域に同一又は類似の店舗を営業又は他人に営業させる旨の規定の有無及びその内容 | |
契約終了後、他のFC事業への加盟禁止、類似事業への就業制限その他加盟者が営業禁止又は制限される規定の有無及びその内容 | |
契約期間中・契約終了後、当該FC業について知り得た情報の開示を禁止又は制限する規定の有無及びその内容 | |
加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項 | |
加盟者から定期的に売上金の全部又は一部を送金させる場合はその時期及び方法 | |
加盟者に対する金銭の貸付け又は貸付の斡旋を行う場合は、それに係る利率又は算定方法及びその他の条件 | |
加盟者との一定期間の取引より生ずる債権債務の相殺によって発生する残額の全部又は一部に対して利率を附する場合は、利息に係る利率又は算定方法その他条件 | |
加盟者に対する特別義務 | |
契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他義務の内容 | |
加盟に際し徴収する金銭に関する事項 | |
加盟者に対する商品の販売条件に関する事項 | |
経営指導に関する事項 | |
使用される商標、商号その他の表示 | |
契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項 |
まず、チェーン概要ですが、この内容からチェーンの実態や業況がおおよそ推測できます。たとえば、チェーンを運営しているのはどんな会社か、チェーンの経営は安定しているのか、業績は伸びているのか、などです。内容の説明については次回以降に譲りますが、どれも超重要な情報ばかりです。
次は、契約の主な内容についてです。これは、不動産取引の際の重要事項説明書のようなものと考えていただければ結構です。
本来、契約の内容は契約書で確認すれば済むこと。ところが、フランチャイズ契約書は複雑で、分量が数十ページになるものも珍しくありません。しかも、文章も難解です。そのため、契約書の中身をしっかり確認しないで契約を締結してしまうこともありがちです。そうしたことがないよう、法定開示書面には、これから締結するフランチャイズ契約の主な内容が記載されているのです。こちらも、チェーン概要同様、重要情報が満載です。
では、なぜ国はこうした細かい規定を作ってフランチャイズ本部に法定開示書面による説明義務を課しているかを考えてみましょう。
フランチャイズは自己責任が原則と言われます。フランチャイズに加盟して事業に失敗した場合、その責任は加盟者自身にあるということです。でも、本部の情報が入手できなければ、どのチェーンに加盟するかの判断ができませんよね。そこで、国は、フランチャイズ本部に対してチェーン概要や契約の主な内容を予め開示しなさい、としているわけです。
実は、法定開示書面の記載事項は平成14年に改定され、開示事項が大幅に拡充されました。新たに開示が義務づけられた事項の中には、加盟希望者が知りたい内容がたくさん盛り込まれるようになりました。反対に、フランチャイズ本部にとっては、できれば隠しておきたい内容も含まれています。法定開示書面は加盟希望者にとって、より有用な情報源になったわけです。
一般に、法定開示書面は加盟契約締結の少し前に提示されます。フランチャイズ加盟を検討している方は、法定開示書面の内容を熟読し、加盟するかどうかの最終的な判断材料にしてください。