フランチャイズビジネス成功のための5か条
FC本部設立についての成功ノウハウはたくさん蓄積されてきていますが、本コラムでは今一度基本に立ち戻り、本部事業を始めるにあたってどうしても外せない条件を考えてみます。
細かく言えば、他のビジネスとは異なるFCビジネス特有の成功ポイントは多々あると思いますが、FCビジネスといえども、大局的には通常のビジネスと変わるものではありません。そこで、ビジネスを考える上での5つの経営資源「人・物(ノウハウ)・金・情報・時間」に即して、成功のためのポイントを5か条にまとめると以下のようになります。
①「人」-トップがFC本部としての経営理念をしっかり持っているか
「FCは理念共同体」と言われるように、本部になろうとする企業のトップは、加盟店に対して明確な経営理念を提示できなければなりません。現在のアーリーステージのFC本部で、加盟店との良好な関係を維持し、加盟店を着実に増やし、顧客に支持されている本部のトップは、人を惹きつける人間的な魅力とともに、皆、自社の行うFCビジネスに対して明確な経営理念を持ち、それについて情熱を持って語ることのできる人物です。その経営理念は1社たりとも同じものはなく、個性的で共感を得るものです。
本部としてのFCビジネスの本質は「人様にやっていただく」ことです。トップには内なる組織を動かしていくだけでなく、外の加盟店組織を動かしていくための巨大なパワーが必要とされます。そのための根幹の原動力となるのが明確な経営理念の存在です。
②「物(ノウハウ)」-FC化可能なビジネスフォーマットを確立しているか
本部として成功するための次なる条件は、特色のある商品、またはサービスを開発し、それらの商品・サービスを販売するための特異な販売技術・ノウハウを既に直営店で実証していることです。成功したビジネスの原型(プロトタイプと呼ぶ)を作ることが本部を成立させる大きな条件となります。プロトタイプ店の成功がフランチャイズ化の作業の6割とも7割とも占めるといわれる所以です。
最近では、成功したプロトタイプもないうちから、FC募集に走っている“擬似”本部も散見されます。このような本部はFCビジネスをなめているとしか思えません。顧客ターゲットのイメージ、事業の必要投資額、事業の収益モデル、競争優位のポイント、環境変化への対応策、店舗拡大のシナリオ、以上を標準化したノウハウ、がひとつのフォーマットとして確立されていなければ、誰もそのビジネスを買う人はいません。
③「金」-先行投資を行うための資本力を有しているか
FC本部は他人資本の活用により、事業の急速展開を図ります。これはFCビジネスの本質のひとつです。しかし、だからといって本部としては資本力が少なくてもよい、というわけではありません。むしろ、FC本部になるためには、多くの先行投資が必要とされることを肝に銘じるべきです。
プロトタイプ店確立のための直営店実験投資、将来の拡大を考慮した事務所投資、情報システム投資、マニュアルなどのツール作成費、共通の広告宣伝費など数多くあります。これらを加盟店数が少ない初期の段階から、先行的に投資をしていく必要があるのです。加盟金・ロイヤルティでそれらの先行投資が回収できるのは、ある程度加盟店の規模が拡大してからになります。
④「情報」-情報公開を積極的に行うことができるか
中小小売商業振興法では、加盟希望者に対する事前情報の開示(いわゆる法定開示書面)が義務付けられており、本部の経営内容(直近3事業年度の貸借対照表や損益計算書など)の開示も含まれています。また、独占禁止法のガイドラインには、売上予測等を示す場合はその合理的な根拠を提示することが必要と明記されています。
これからのFC本部の評価は、情報公開の積極性および客観性のウエイトが高まっていくことは間違いありません。先にも述べましたが、FCビジネスが人様にやっていただくビジネスである以上、それまで培ってきた成功・失敗のノウハウを包み隠さず情報公開することが、本部・加盟店の良好な関係を持続させる前提条件になります。情報を開示しないがために生じる“ボタンの掛け違い”をなくしていくことが、FC本部を始める上での大きな成功ポイントとなります。
⑤「時間」-「事業の展開スピード」に軸足を置いた経営ができるか
FCビジネスに参入する大きな狙いとして、事業の急速展開があげられます。市場競争の変化や消費者ニーズの移り変わりの激しい現代にあって、従来のようにゆっくりとした事業展開計画では、初期投資が十分回収できないまま、さらに多大な追加投資が必要とされる自体に直面してしまいます。競合の参入も激しく、市場の主導権争いには、競合より半歩でも先んじてマーケットを制圧するスピード重視の経営でないと競争に負けてしまいます。
中期・短期の事業計画をしっかりと立案し、絶えずローリング(見直し)を図りながら、ハイスピードで突っ走る経営を行う意思を持つことが成功のポイントです。