日本フランチャイズ研究協会

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アジア、アフリカ、中南米地域におけるフランチャイズ展開の可能性

海外展開  本部向けコラム 

2024年12月15日

フランチャイズビジネスは、既存ブランドの知名度や経営ノウハウを活用することで、効率的かつ持続的に市場拡大を図れる魅力的な手法です。特に、経済成長が著しい新興市場での展開は、成長余地の大きさから注目を集めています。本コラムでは、アジア・アフリカ、中南米地域におけるフランチャイズ展開の可能性について、実例を交えながら成功要因や課題を詳細に分析し、具体的な戦略の方向性を提示します。

 

新興国市場の注目理由

1.1 経済成長と中間所得層の台頭

  • アジア アジア市場では、中国、インド、インドネシアといった国々が経済成長の牽引役を担っています。特に中間所得層の増加が顕著で、これが消費者の購買力を底上げし、フランチャイズチェーンの市場拡大を促進しています。たとえば、インドでは経済自由化以降、都市部を中心に中間所得層が急速に増加し、食品・飲料や教育関連サービスに対する需要が拡大しています。

 

  • アフリカ アフリカ大陸全体で急速な人口増加と都市化が進行しており、特にナイジェリア、ケニア、南アフリカなどが注目されています。人口の半数以上が30歳以下の若年層であり、これが将来的な消費市場の拡大を支える要因となっています。さらに、インターネットとスマートフォンの普及により、JumiaやAmazonをはじめとするEコマースも可能性を広げています。

 

  • 中南米 中南米ではブラジル、メキシコ、コロンビアが市場規模の大きさで際立っています。この地域は経済格差が大きいものの、中間所得層が急成長しており、特に都市部での購買力向上が顕著です。メキシコでは、米国ブランドのファーストフードや小売チェーンが拡大していますが、現地のライフスタイルに適応した製品やサービスを提供することで成功している事例も多く見られます。

 

1.2 都市化の進展とライフスタイルの変化

  • アジア アジアの新興市場では、都市部での核家族化や女性の社会進出が進んでおり、これが外食産業や小売業の成長を後押ししています。特にコンビニエンスストアやテイクアウト食品チェーンが、忙しいライフスタイルに適応して急成長しています。

 

  • アフリカ アフリカでは、都市化が進む一方で、公共インフラが不十分な地域が多いため、便利でアクセスしやすいサービスが求められています。都市部を中心にタクシー配車やフードデリバリーなど、日常生活でのアプリ利用が一般化しつつあります。

 

  • 中南米 中南米では都市化率が70%を超えており、地域社会に密着したサービスが成功の鍵となります。たとえば、アルゼンチンでは、地域特有の食材を活用したファーストフードチェーンが存在します。MOSTAZAというアルゼンチン発祥のファーストフードチェーンがあり、国内で3番目の規模を誇っています。また、近年では中間所得層の健康志向の高まりに応じたオーガニック食品チェーンの展開も注目されています。

 

1.3 消費者嗜好の多様化とブランド志向の高まり

  • アジア アジアでは、若年層を中心にSNSを活用したブランドイメージの重要性が増しています。インフルエンサーを起用した広告戦略やデジタル決済の普及を活用することで、消費者との接点を広げることが可能です。

 

  • アフリカ アフリカでは、ローカルブランドに対する信頼感と、国際ブランドへの憧れが交錯しています。成功するためには、国際基準の品質を維持しながら、地元文化への配慮を欠かさないことが重要です。

 

  • 中南米 中南米では、ラテン文化に根付いた地域性の強い嗜好が消費行動に影響を与えています。一方で、米国やヨーロッパブランドへの関心が高まっており、これを活用した戦略が成功する例も増えています。たとえば、スターバックスは現地で人気の高いコーヒー豆を使用した限定商品を投入し、地域密着型のブランドイメージを強化しています。

 

 

各地域の市場動向と事例

2.1 アジア市場

アジア市場では、特に中国、インド、インドネシアが注目されています。これらの国々の人口は合わせて約28億人(2023年時点)であり、巨大な消費市場を形成しています。

  •  スターバックス(Starbucks) スターバックスは2024年4月には中国本土で7,000店舗以上を展開し、アメリカに次ぐ2番目の市場と位置付けています。2017年には「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」を上海で開設し、地域特有の高級志向に応えています。また、インドでは2024年時点で390店舗以上を展開し、「インディアン・インスパイアード」ティーを最低価格185ルピー(2.24ドル)で発売する等地元のティー文化に適応した商品を投入し、ローカライズ戦略で成功を収めています。また、インドでは2028年までに国内1000店舗を目指しています。
  • インドネシアのKFC インドネシアでKFCは2024年では約700店舗を展開しており、現地食材を活用したメニュー(例: ナシゴレン風ライスボックス)を提供することで、地域の消費者に適応しています。

 

2.2 アフリカ市場

アフリカ市場は、ナイジェリア、ケニア、南アフリカなどが経済成長の中心地となっています。ナイジェリアの人口は2023年で約2億2,000万人とされており、今後さらに増加が見込まれます。

  •  ケンタッキー・フライド・チキン(KFC) 南アフリカで1,000店舗以上を展開しており、アフリカ全土でさらに成長を計画しています。特にケニアやナイジェリアでは、物流ネットワークを強化し、現地の農産物供給者との提携を行っています。
  • ナイジェリアのドミノ・ピザ(Domino’s Pizza) ナイジェリアで80店舗以上を展開しており、現地特有の具材(例えば、ペペスープフレーバーのピザ)を採用し、地域性を強化しています。

 

2.3 中南米市場

中南米はフランチャイズ事業が急速に拡大している地域です。特にブラジル、メキシコ、コロンビアは、その規模と成長率の両方で注目されています。

  • マクドナルド(McDonald’s) メキシコでは350店舗以上、ブラジルでは1,000店舗以上を展開しています。中南米では、価格感度の高い市場に対し、低価格帯メニューを充実させる一方で、現地の食文化を取り入れた新商品(例: ブラジルのチュラスコバーガー)を展開しています。
  • スターバックス(Starbucks) メキシコでは、2023年時点で約750店舗を運営し、地元文化に根ざしたデザイン店舗を展開。地域コミュニティとの接点を強化する戦略を取っています。

 

 

新興国特有の課題

3.1. 政治・法規制の不安定性

新興市場では、政権の交代や政策の変更が頻繁に発生し、事業活動に不確実性をもたらします。

  • 政策変更: 突然の税率変更や輸出入規制の強化により、コストが予期せず増加する場合があります。たとえば、インドでは近年、輸入に関する規制が厳格化され、海外企業が影響を受けました。
  • 官僚的障壁: 許認可プロセスが複雑で時間がかかるケースも多く、タイムリーな事業開始を妨げます。

 

3.2 インフラの未整備

多くの新興市場では、物流や通信インフラが整備されていないため、製品やサービスの提供が困難です。

  • 物流の課題: アフリカでは、道路や鉄道網の不足が物流コストを押し上げています。たとえば、ナイジェリアの農村部では製品輸送が非常に困難で、供給チェーンの整備が課題となっています。中南米市場では、インフラ整備と効率的な物流システムの構築が依然として大きな課題となっています。
  • 通信の問題: インターネットやモバイルネットワークのカバー率が低い地域が多く、デジタルマーケティングやEコマースの展開に制約が生じています。他方で、スマートフォンの普及により、アジアでは、スマートフォンの普及に伴いモバイル決済が急速に拡大し、中国では、WeChat PayやAlipay、東南アジアでも、フィリピンのGCash、インドネシアのGoPayなどが一般化しています。

 

3.3 文化的多様性と適応の必要性

新興市場は文化や言語が多様であり、消費者の嗜好も地域によって大きく異なります。

  • 現地化の必要性: たとえば、南アフリカのケンタッキーフライドチキン(KFC)は、地元の好みに応じたメニューを提供することで成功していますが、このような適応には時間とコストがかかります。
  • 文化的誤解: 文化的な慣習や規範を誤解したままマーケティングや事業運営を行うと、顧客からの信頼を失う可能性があります。

 

 

まとめ

これらの地域でのフランチャイズ展開は、ローカル市場への適応とグローバルな基準のバランスが求められます。アジア、アフリカ、中南米のそれぞれの地域特性に合わせた柔軟な戦略をたてた上で、フランチャイズを活用し、新興国市場に進出しましょう。

中山直哉

愛知県出身、中央大学法学部、法政大学経営大学院IM研究科修了。フランチャイズ本部、在京メキシコ大使館経済局を経て、外務省所管の独立行政法人入構。中南米地域の事業管理や食品輸入販売事業の立ち上げに従事。

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