日本フランチャイズ研究協会

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フランチャイズビジネスの成功鍵「プロトタイプ」構築の重要性

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2025年01月26日

フランチャイズビジネスを成功に導くためには、プロトタイプの確立が欠かせません。この記事では、プロトタイプの必要性と具体的な構築プロセスとポイントを解説します。

プロトタイプとは

「プロトタイプ」は試作品を意味する言葉ですが、フランチャイズビジネスにおける「プロトタイプ」とは、加盟店開発のベースや、加盟店にとっての規範となるようなモデル店舗を指します。つまり、フランチャイズモデルを展開する前に、本部が直営店として構築・運営する店舗のことです。
フランチャイズ展開するにあたっては、自社のビジネス(業態)が、競争力のある商品・サービスを展開しており、十分な収益性を有していることが必要です。加えて、これらの商品・サービスを販売するための成功ノウハウが直営店で実証され、そのノウハウが再現性を有していることが求められます。
一つの店舗が繁盛したとしても、地域性・流行性・店主の個性等の特殊要因でたまたま繁盛しているだけかもしれません。そのような特殊要因を排除し、別の店舗でも繁盛するような再現性を高めることがプロトタイプを構築する目的です。フランチャイズ加盟者にとってプロトタイプは、加盟前にはそのビジネス(業態)が加盟に足る魅力を備えているかを判断する材料になる上、加盟後には、運営を成功させるための指針・模範となります。
プロトタイプの構築にあたっては、「3ショップ・2イヤーズ・ルール」という原則があります。これは、直営店を最低3店舗以上出店し、2年以上運営した実績を積むことで、その成功要因が普遍的で再現可能であることを検証した上でフランチャイズ展開するべきであるという考え方です。
店舗のオペレーションを標準化し、安定した業績が出せることを証明するためにも、最低2 年以上の時間が必要です。昨今は市場環境や消費者ニーズの変化等のスピードが速いため、業態の陳腐化も早く進むため、「最低1年以上」とする考え方もあります。業種や業態の特性、本部が投入できる経営資源の質と量、競合チェーンの展開スピードなども勘案して、検証期間を設定する必要がありますが、いずれにせよこのルールが達成されて初めて、フランチャイズチェーンを展開できる可能性が高まるのです。

プロトタイプの作り方

プロトタイプは業態コンセプト、店舗オペレーション、商品・サービス、そして販売促進策がすべて一体となった、運営モデルの標準形である必要があります。
プロトタイプ構築のプロセスは、以下の流れで進めます。


①業態コンセプトの明確化
フランチャイズビジネスを展開する第一歩は、業態コンセプトの明確化です。具体的には、以下の要素を定義することが重要です。
・ターゲット顧客層の設定:例・・・都市部の若者向け、地方の高齢者向けなど
・商品の特徴や価格帯:独自性があり、競争優位性を持つ商品
・競争優位性の確立:他社が簡単には模倣できない「ブラックボックス」の形成
ここで重要なのが「ブラックボックス」というキーワードです。ブラックボックスとは、内部の構造が明らかでないものや原理が不明なものを指します。一見マネができそうに見えても、ブラックボックスがあることで、「マネをしてみたけれどうまくいかない」という状況をつくることができ、真の競争力を持つことができます。


②適正商圏と立地タイプの分析
適正商圏とは、その業種業態がターゲットとする顧客層を吸引できる主要な地理的範囲のことです。適正商圏は業種・業態コンセプトによって異なるほか、交通機関や道路条件等の地理的な条件によっても異なります。商圏分析では、総務省の統計データや地理情報システム(GIS)を活用して、ターゲット顧客層の人口や購買力を評価します。
また、駅前型や住宅地型、ロードサイド型など、業態に最適な立地タイプを選定することも重要です。例えば、飲食業では商圏の広さは商品の単価や提供スピードに応じて異なり、ロードサイド型では車を利用する顧客を想定した広い商圏が必要です。


③商品・サービスの開発と育成
商品・サービスがなぜ売れたか、売れなかったかを分析し、売れる「理由」を明確にして商品・サービスを提供する能力が本部には求められます。フランチャイズパッケージとして提供する場合、思いつきやその場限りの仕入ではパッケージになり得ないからです。
直営店での売れ筋や改良点の把握といった販売分析を通して、商品開発を継続的に実施することで、商品の品質を高めることが必要です。


④店舗オペレーションの標準化・システムの導入
店舗によってオペレーションがバラバラでは、提供されるサービスや品質にバラつきが発生し、フランチャイズチェーン全体のイメージが低下してしまう恐れがあります。サービス水準の維持・向上とローコストオペレーションを同時に実現するためにも、基準となるオペレーションの確立とシステムの導入は不可欠です。調理や接客の手順、システムの操作手順などの直営店の「当たり前」を明文化し、まとめてマニュアルに落とし込む必要があります。


⑤店舗デザイン・設計の標準化
フランチャイズチェーンは「統一イメージ」のもとチェーン展開することが重要です。その最たるものは店舗デザインであり、このデザインに統一性が感じられないとチェーン展開のメリットを生かすことが難しくなります。店舗デザイン・設計を標準化することで、顧客はそのブランドにより保証される品質を連想し、安心して店舗を利用できます。
また、前述のオペレーションの標準化の観点からも設計は検討するべきです。例えば、従業員動線(施設内の従業員が通る道筋)はなるべく短くすることで作業効率が高まります。


⑥効果的な販売促進策の検証
販売促進策の有効性を検証し、最適な施策を特定することも重要です。SNSやWebマーケティングでの広告やキャンペーンを通じた認知度向上が必要不可欠であることはいうまでもありませんが、販促活動には、広告、PR、パブリシティ、人的販売などがあるので、自社の商品・サービスに合った販促活動を実施することが重要です。


⑦業態のブラッシュアップ
プロトタイプが一定のレベルに達したとしても、時代の変化や顧客のニーズに応じて業態をブラッシュアップすることは忘れてはいけません。商環境の変化スピードが速く、外部環境の変化に合わせて業態をブラッシュアップしていかなければ企業として生き残っていくことが難しい時代です。たとえばコンビニエンスストアは、もともと若者対象の商品構成が中心でしたが、料金収納代行やチケット購入端末の導入、コーヒーマシンや野菜・惣菜の取り扱いなど、老若男女を対象とし、外部環境の変化に合わせて業態をブラッシュアップさせてきました。このように、外部環境の変化に柔軟に対応し、新たな価値を提供することで、持続的な成長を実現できます。

 

まとめ

フランチャイズビジネスの成功には、3ショップ・2イヤーズ・ルールにクリアすることが必要であり、このためにはプロトタイプの構築が欠かせません。競争力のあるビジネスモデルを確立し、加盟者と本部双方が持続可能な利益を享受できる仕組みを作るためには、見切り発車でなく丁寧な検証と運営の標準化、そして継続的なブラッシュアップが必要です。
これからフランチャイズ本部を立ち上げたいと考えている方には、本記事の内容よりも詳しく踏み込んだ内容がフランチャイズ研究会 「新版 フランチャイズ本部構築ガイドブック」(同友館,2022)で解説されていますので、適宜参考にしてください。

中嶋 亜美

中小企業診断士

コンサルタントとして小売・流通業の業務改革や生産性向上を支援する他、ライフワークとしてコーチ・講師としても活動。DXとコーチングを得意領域としながら、公的機関を中心に執筆・講演を実施。

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