フランチャイズ本部はどのような加盟店支援を行うのか
フランチャイズ本部は加盟店と契約したら全て完了というわけではありません。加盟店が開業後にお客様を満足させつつ継続的な利益を上げていけるように、本部としては開店前・オープン直前・オープン時・オープン後に様々な支援を継続的に行っていく必要があります。また内容も店舗の業務オペレーションから新商品開発・マーケティングなど多岐にわたります。今回のコラムではフランチャイズ本部がどのような加盟店支援を行うのかを解説していきます。
開店前の教育とは
① 経営理念の共有
開店前教育において最初に行うべきことは『経営理念の共有』です。本部と加盟店は基本的に資本関係が無いのですが、その中で同一の事業を営むには、細かな現場のオペレーションや個々の商品の扱い以前に、経営理念に対する共通認識を持って同じ価値観の元にそれぞれの役割(経営)を実践することが重要になります。
経営理念に関しては座学研修を行うのが一般的ですが、加盟店がある程度の規模以上の法人である場合は、現場店長候補だけでなく担当部門長とも行うことがポイントとなります。また加盟店のオーナーに対しても本部の経営姿勢や加盟店オーナーとしての心構え、マネジメント事項などを解説した「オーナーズマニュアル」の作成が望ましいです。なぜなら本部と加盟店の間に経営理念の認識から別々の指示が飛ぶと、加盟店現場の店長が板挟みになる危険性を持ち、本部の支援内容が十分に現場に反映されづらくなるためです。
② 実地研修(オペレーション研修)
経営理念の次はオペレーションの研修を行います。いわゆる商品やサービスの理解、日々の店舗の行動などを訓練するものです。限られた研修期間でいつ、何の項目を教えるのか。事前及び事後にチェックできるようにスケジュールを組むことが大切です。また研修トレーナーの資質も大切です。自分が出来るだけでなく、加盟店に教えることのできる人材を本部内で育てる必要があります。
研修において習熟度の低い受講生をそのまま「卒業」させてしまうと、運営レベルの低い加盟者となってしまう恐れがあります。時には本部を巻き込んだクレームやブランド価値低下につながることもあります。研修の途中や最終段階で受講生の習熟度や適性を判断できるチェック制度を準備しておき、明らかに不適合な場合には早い段階で研修の再受講や延長を加盟者に進言します。
時には研修の再受講によってオープンスケジュールの変更があるかもしれません。そのような事態に対応するために、本部はあらかじめ研修の延長や受講生の交代を求められる事項を契約書に明記しておくことも大切です。
③ オープン前研修
社員等が実地研修を受けている最中に実際に運営する加盟店店舗の施工が完了すると、いよいよ加盟店店舗の現場における研修が行われます。既に店長や社員は実地教育を受けていますが、アルバイトはここが初めての研修になることが多いです。そこでまずは店長から経営理念をスタッフに説明し、その後にオペレーション研修へと移行します。加盟店のスタッフは加盟会社が雇用しています。店長主体の体制を構築することもオープン前研修では重要なポイントとなります。
④ オープン時支援
研修は限られた時間で行うため、実践の時間は不足します。オープン時は個々のオペレーション能力が習熟していないので運営が円滑になりづらいです。本部としては時には応援スタッフを派遣するなどの支援も含めて、オープンを無事に乗り越えさせる支援を行う必要があります。
⑤ 開店後のスーパーバイジング
開店後にはスーパーバイザー(SV)が店舗へ定期的に臨店し、本部の方針・指導・マニュアル通りに営業できているか支援を行います。スーパーバイジングの項目だけでも膨大な量になるため、今回のコラムでは省略いたします。こちらの「スーパーバイジング体制構築」コラムや「飲食食店FC本部におけるスーパーバイザー制度構築の手順(入門編)」の書籍を参照してください
スーパーバイジング以外の開業後支援例
スーパーバイジング以外の開業後支援には以下のような項目があります。
① 新商品・新サービスの導入
顧客の継続的な取込には新商品・新サービスの開発が必要です。新商品の導入時には事前に直営店でテストマーケティングを行った後、加盟店に対しても商品の特性やオペレーションの留意点などを詳細に説明する必要があります。単に新商品を作りました、だけでは加盟店スタッフが顧客に説明できず、顧客満足度をかえって下げてしまうこともあります。また、全ての店舗が同一の設備・スペースを有しているわけではないため、オペレーション等でも難易度に差が出てくることもあります。
このような時には店舗の担当SVを中心として加盟店とのコミュニケーションを密に行い、加盟店側が安心して新商品・新サービスを導入できるようにサポートする必要があります。
② マーケティング施策
マーケティング支援というと多岐にわたりますが、ここでは「店舗の商品分析」と「販促計画」の二点に絞って述べていきます。
ⅰ.ABC分析
店舗における売れ筋商品や利益貢献商品を分析することで、陳列棚の再構成や販売トークの構成などを見直す必要があります。同業態でも立地や陳列など些細なことで売れ筋商品は変わっていきます。直営店と加盟店で商品別に売れ行きの何が違うのか、理由はあるのかといったものを分析していきます。そのためにはまずは商品・サービス別に出数の多い順からA・B・Cと区分することで分析の基になるデータ収集が求められます。
近年は売上データを分析するシステムも様々なものがあり、汎用性のあるソフトでは安価に導入できるものもあります。店舗やスーパーバイザーの負荷を最小限に留めつつ、データを分析し、店舗別の販促方法の構築を支援することが本部側には求められます。
ⅱ.広告方法
店舗がオープンした後は何といっても顧客の集客が求められます。チラシ・SNS・Web広告など様々な集客方法がありますが、業態や店舗によってお客様の反応は差があることもあります。また広告費用は有限であり、無尽蔵に使用するわけにはいきません。本部は既存店の広告成功モデルをパターン化して加盟店に提供し、販促の反応率向上や広告デザインの統一化、製作期間の短縮、スケールメリットによる店舗当たりの広告費用削減を提供する必要があります。
また広告による集客の結果を分析し、費用対効果を測ることで次回以降の販売促進計画につなげることも本部として重要な支援内容です。
③ 予実管理
商売である以上、加盟店としても店舗収支における黒字幅を拡大し、継続的な利益を出し続ける必要があります。そのためには予算と実績を検証する予実管理を行いながら、投資回収の状況を確認する必要があります。広告と売上の関係、売上に応じた人件費の配分、余計な経費の削減しつつ必要経費を正しく使って利益を上げる活動が必要となります。
余計な経費の削減はもちろんですが、必要な経費をかけていない場合はサービス提供レベルに関して本部が要求するレベルに達していないこともあります。スーパーバイザーを中心にオペレーションだけでなく店舗の収支の予実管理を支援していくことが大切です。
本部は加盟店に対して、上記で挙げたような項目を開業後も支援する必要があります。業態や規模・ロイヤルティによって全てを完全に網羅することは難しいかもしれませんが、本社が提供するサービスに対して必要な支援をおこなうことで、本部と加盟店の両方が発展することを忘れないようにしましょう。
まとめ
冒頭に書いた通り、本部の役割は加盟店と契約して終わりではありません。しかし現実には加盟金獲得だけを目的として、開業後の支援が乏しい本部も散見されます。とはいえ、手厚い加盟店支援には少なくない本部負担がかかるのも実情です。加盟店支援の内容とロイヤルティ金額の設定の制度設計を事前に構築することで、本部・加盟店両方が末永く発展する体制を整えていきましょう。