コラム

COLUMN

絶えざる革新が強い事業を創る

「FC本部を始めたいのですが」と相談にいらっしゃる方々の中によく見受けられるのが、1つの自信の持てる商品が開発できたので、その販売をFCの手法で広げたい、という案件です。例えば、特製のスープを使用したラーメン、ご飯と肉を合体させたこれまでにない新食品、また高齢者に便利な新機能を持たせた杖、女性向けお洒落かつ実用的なファンシーグッズ等々です。

これらは確かに、消費者にとって画期的な新商品となる可能性があります。ひょっとしたら、新しい需要または市場を開拓することになるかもしれません。このような商品をFCで販売拡大することは、社会の発展に役立つ可能性もあります。

FCという方法での事業展開は、資本力が無くとも早期に多店舗展開を進め、高い市場占有率を獲得し、自社ブランドの知名度を短期間に高められる可能性があるものです。これがFCの醍醐味でもあり、これができれば、競合チェーンが現れたとしても、優位に事業展開を進めることができます。

しかし実際には、初期段階の知名度の低いFC本部の加盟店開発は、けして容易ではありません。ですから、資本力に劣るFCが短期間に高い市場占有率を獲得するというのは、現実的にはかなり難しいと言わざるをえません。それには、それなりの時間がかかると考えた方が妥当です。

また、すばらしい商品を1つ開発できたというだけでは、順調にFC展開を進めていかれるかどうかに不安があります。マーケティング等々の様々な課題も考えられますが、ここではひとまず商品に限って考えてみます。

例えば、その商品が完成に至るまでには、大変な時間や労力をかけて開発がなされたかもしれません。けれどその商品は、完成した後では、誰かに容易に真似ができる、という事も有り得ます。類似商品を掲げた競合他社が、すぐに現れるかもしれない、ということです。このとき、真似して製作された商品は、開発費がかかっていませんから、あなたの商品より価格面での競争力が勝っている可能性が高いといえます。

それでは、どう対処すればよいでしょうか。

大切なのは、常に革新を念頭に置く、ということです。商品であれば、せっかく苦労して開発し完成させたものであったとしても、常にお客様の声や加盟店様の声を聞き、改良をしたり、または更なる新商品の開発をし続けるということです。常に市場をリードする、という気構えが大切です。そうすれば、競合他社が(たとえそれが大手企業であったとしても)類似商品をもって市場に参入してきたとしても、恐れることはありません。

自信の持てる看板商品の存在はもちろん重要なのですが、これはすばらしい商品だからとその商品に頼りすぎず、現状に甘んじることなく、常に先を見据え、向上心を持って進むことが大切です。

大橋 美香
中小企業診断士
大橋 美香
コラム著者のご紹介

1987年信州大学経済学部卒。松井証券株式会社を経て、大橋税理士事務所に勤務。1995年に中小企業診断士に登録。小売業、飲食業、サービス業等広い分野のクライアント様の経営支援、会計・税務業務の支援をしている。フランチャイズでは主に飲食業のマーケティング関連の支援をはじめ、市場調査、研究、執筆をしている。