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【最新FCトレンド|総合】2016年度のフランチャイズ業界を振り返って(2017.4.3)

東京は桜が満開となり、各地の花見の名所は大いに盛り上がっている。あまり実感はないのであるが、新年度である2017年度(平成29年度)がスタートした。
そこで、幕を閉じたばかりの2016年度(平成28年度)のフランチャイズ業界を振り返ってみたい。とはいえ、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が2016年度(平成28年度)の数値データを公表するのは今年の10月末になるので、昨年度のFCの動向についてはあくまで個人的な肌感覚に基づくものだ。

一昨年度のFC業界は低迷

昨年度(2016年度)を振り返るためには一昨年度の状況を思い起こす必要がある。一昨年のフランチャイズ業界は決して堅調という訳ではなかった。チェーン数、店舗数、売上高のすべてで増加となったものの、チェーン数、店舗数、売上高の伸びは、いずれも、東日本大震災の影響が色濃かった2012年度、消費税率が8%に上がり消費が低迷した2014年度よりも低いものだった。
一昨年のフランチャイズ業界が低迷した主たる理由は2つある。1つ目はマクドナルドの業績悪化だ。マクドナルドの全店売上高は、2010年には5427億円であったものが、2015年度は30%以上落ち込んだといわれている。低価格路線が行き詰まり、食材を巡る不祥事が業績不振に追い打ちをかけた格好だ。2つ目はこれまで好調に推移していたデイサービスフランチャイズにブレーキがかかったことだ。2015年4月に介護保険法が改正され、デイサービス事業者の経営環境が急激に悪化した。また、要介護者を抱える家族にとってありがたい存在であったお泊りデイ(デイサービスの利用者がそのまま宿泊できる介護サービスのこと)に対する規制が強化され、事業を継続することが困難となった事業者も多かった。そうした影響が色濃く反映されたのが2015年度のフランチャイズ業界であった。

2016年度のFC業界はどうであったか

さて、2016年度はフランチャイズ業界はどのような1年であっただろうか。一昨年度に低迷したマクドナルドの業績はV字回復をしているし、デイサービス事業者は介護保険に過度に依存しない新業態を次々に世に出している。おそらく、昨年度のマックとデイサービスフランチャイズが足を引っ張ることはないだろう。フランチャイズチェーンの倒産はいくつかあったが、トータルリペア以外に目立った倒産はなかった。

小売業

小売業では、100円ショップ各社が積極的な出店を進めている。フランチャイズ売上高の約4割を占めるコンビニの店舗数と売上高も堅調だ。コンビニ全店売上を2016年4月~2017年2月の11ヵ月間の売上高を1年前の11ヵ月間とで対比すると+2.9%となり、2016年度もコンビニがフランチャイズ全体を牽引することは確実だ。

外食業

2015年に店舗数と売上高を減少させて外食業だが、巻き返しの兆しがみられる。一般社団法人日本フードサービス協会の調べでは、2016年の外食業売上は2.8%の増加。外食業フランチャイズにもこの好影響は及ぶだろう。

サービス業

サービス業では、待機児童問題や女性に社会進出に対応する保育、学童保育の市場は活況だ。小学校での英語義務教育化は教育系のフランチャイズには引き続き追い風だろう。社会構造の変化に対応した新しいサービス業フランチャイズも次々に登場している。

このように考えると2016年度のフランチャイズは堅調に推移し、引き続き我が国経済の成長セクターとしての地位を維持したものと想像できる。

人手不足の深刻化

そうした中、気がかりな点は人手不足の深刻化である。完全失業率はバブル期並みの低水準で、有効求人倍率は全都道府県で1倍を超え、最新の数値である2017年2月の有効求人倍率(季節調整値)は1.43倍となった。人手不足感は特に都市部で高く、いくら求人費をかけても人が集まらないという声を聴く。人手不足がフランチャイズの成長にブレーキをかけた可能性を否めない。

伊藤 恭
中小企業診断士
伊藤 恭
コラム著者のご紹介

成蹊大学経済学部卒業、イベント会社社長を経てFCコンサルタントとして独立。㈳東京都中小企業診断士協会フランチャイズ研究会会長、日本フランチャイズチェーン協会フランチャイズ相談室相談員等を歴任。豊富なフランチャイズ本部構築実績あり。日本経済新聞社主催のFCショー等での講演、FC専門誌・専門書の執筆多数。