日本フランチャイズ研究協会

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フランチャイズ従業員の労働時間・時給について

加盟者向けコラム 

2024年11月12日

フランチャイズ加盟店が負担する費用の一つに人件費があります。人件費はフランチャイズ店舗運営の中で大きな割合を占める費用になります。主な人件費としてアルバイト従業員の給料があり、アルバイト従業員に支払われる給料は、多くの場合「労働時間×時間単価(時給)」で算出されます。アルバイト従業員の給料を構成する「労働時間」と「時給」について確認しましょう。

労働時間について

労働基準法で労働時間は「労働者(アルバイト従業員)が使用者(フランチャイズ加盟店)の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。労働時間となるかならないかは「フランチャイズ加盟店の指揮命令下に置かれている時間」であるかを基準に判断することになります。
 
下図は「厚生労働省: 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」の労働時間に該当する具体例です。
 

 
例えば、始業前にアルバイト従業員同士で談笑する時間はフランチャイズ加盟店の指揮命令下に置かれているとは言えず労働時間となりません。一方で、飲食フランチャイズ店で始業10分前に出社し、制服に着替えるための時間や、午前と午後で異なる店舗や事業所に勤務する場合の移動時間や、介護フランチャイズ事業所で、夜勤の場合にサービス利用者からの呼び出しを待っている時間(手待ち時間)は、フランチャイズ加盟店の指揮命令下に置かれていると考えられ、労働時間になります。
 
そのほか、理容業フランチャイズのカット研修や整体業(カイロプラティック等)フランチャイズの施術訓練など会社が指示して業務に必要な教育訓練をする時間についても、フランチャイズ加盟店の指揮命令下に置かれていると考えられ、労働時間となります。
労働時間となる場合、その時間に対して給与の支払い義務が生じます。フランチャイズ加盟店は人件費を適正に把握するためにも、アルバイト従業員の労働時間を適正に把握する必要があります。

時給について

時給とは、1時間単位で労働を提供した際に支払われる賃金のことです。賃金は原則としてフランチャイズ加盟店とアルバイト従業員の間で自由に決めることが可能ですが、法律で定められた「最低賃金」を下回る賃金の設定はできません。最低賃金には、フランチャイズ加盟店舗が所在する都道府県ごとに設定されている「地域別最低賃金」と、特定の地域と業種に設定されている「特定最低賃金」があります。
 
「地域別最低賃金」について、例えば、2024年10月の東京都の地域別最低賃金は時給1,163円です。東京都のフランチャイズ加盟店舗の場合、時給1,163円を下回る時給を設定することはできません。
 
「特定最低賃金」について、例えば、福島県の自動車小売業の特定最低賃金は時給960円です。福島県の2024年10月の地域別最低賃金は時給955円ですが、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が同時に適用される場合は、高い方の最低賃金額が適用されます。よって、福島県の自動車小売業のフランチャイズ加盟店の場合、従業員の最低賃金は特定最低賃金が適用され、時給960円となります。
 
また、労働基準法では労働時間は「1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない」と定められています。この「1日8時間かつ1週間40時間」を法定労働時間といい、法定労働時間を超えた労働時間については時間外労働となり、割増賃金(残業代)を支払う義務が生じます。先述の福島県の自動車小売業の最低賃金である時給960円で働く従業員が法定労働時間を超えて残業した場合、賃金の2割5分以上の割増率となるため、時間外労働1時間につき、割増賃金を含めて時給1,200円(時給960円×1.25)を支払う必要があります。割増賃金には時間外労働以外に、休日労働と深夜業に対するものがあります。割増率はそれぞれ、休日労働時には通常の賃金の3割5分以上、深夜業時(午後10時から翌朝午前5時までの間に労働)には、通常の賃金の2割5分以上で支払う必要があります。
 
このように時給を決定する際には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」や労働時間に応じた「割増賃金」を考慮に入れる必要があります。
 

労働時間管理の留意点

「厚生労働省: 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」では、労働時間の適正な把握のためにフランチャイズ加盟店が講ずべき措置として、フランチャイズ加盟店はアルバイト従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を「確認」し、適正に「記録」することとあります。
 
・労働時間の確認
労働時間の確認方法として、アルバイト従業員からの自己申告ではなく、フランチャイズ加盟店が自ら現認することにより確認することが大切です。例えば、残業時間をアルバイト従業員の自己申告にすると、サービス残業や不必要な残業など、実際の労働時間と差異が生じることがあります。そのため、残業申請書や時間外指示書を用い、アルバイト従業員が残業を行う場合は、事前に上司に申請し承認を受ける「残業事前承認制度」の導入を検討すると良いでしょう。
また、残業をしないで定時に仕事を終わらせる日を設定する「ノー残業デー制度」を導入すると店舗全体で帰りやすい雰囲気が作られ、ムダな残業が無くなることや、業務生産性の向上にもつながります。「ノー残業デー制度」については、週1日を目安に取り組んでみると良いでしょう。
 
・労働時間の記録
労働時間の記録方法として、ガイドラインでは、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録等の客観的で適正に記録することが推奨されています。タイムカードを打刻するタイミングについては、厳密には仕事開始時間から仕事終了時間となります。しかし、自主的な業務準備などを考慮し、タイムカードを打刻するタイミングを職場に到着した出社時間から退社時間とし、その時間を労働時間としている店舗もあります。
ペーパーレス化やテレワーク、直行直帰などの多様な働き方に対応するために、紙のタイムカードから、勤怠管理システムが提供するスマホアプリや、パソコン上で打刻のできるソフトウエアを活用し、労働時間管理をデジタル化する店舗も増えています。紙のタイムカードを導入している店舗はアルバイト従業員のITスキルに応じて、デジタル化を進めましょう。コスト削減や業務効率化につながります。

まとめ

「日本政策金融公庫:小企業の経営指標調査」では、小企業の収益性や生産性などの指標値が公開されており、業種ごとの売上に対して人件費が占める率(人件費対売上高比費率)の平均値が公開されています。具体的には、学習塾では49.8%、理容業では53.9%、そば・うどん店では41.5%が平均人件費対売上高比費率となっています。売上に対して人件費が占める割合が、サービス業で6割以上、飲食業で5割以上等の場合には、人件費対売上高比費率が平均より高いため、売上に対して人件費が過大な可能性があります。アルバイト従業員の労働時間の「確認」や「記録」の方法を見直し、労働時間の適正な把握に取り組みましょう。

高畠 伸晃

中小企業診断士/社会保険労務士

1979年東京都生まれ。成蹊大学工学部卒。システムエンジニア、食品等の営業を経て、2021年に独立。公的機関における中小企業の経営支援や、フランチャイズ本部の労務相談などに従事。

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