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これだけは押さえておこう!フランチャイズ契約書作成の基礎知識

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2025年01月12日

フランチャイズビジネスを成功させるために、契約書の作成は重要なステップです。契約書は本部と加盟店の関係性を明確化し、トラブルを未然に防ぐ役割を果たします。しかし、適切な設計がされていない契約書は、双方に不利益をもたらすリスクをはらんでいます。本記事では、フランチャイズ契約書作成時の留意点、双方の立場を反映した設計の重要性、そしてトラブル防止のための具体的な条項について解説します。

契約書作成時の留意点

1.基本姿勢

フランチャイズ契約書を作るときは、実行できない契約書を作らないことが重要です。例えば、マニュアル類が未整備の状態で「詳細についてはマニュアルに従う」と記載するのは適切ではありません。契約書に記載する内容は、現時点で実行可能であり、具体的な運用に対応できるものでなければなりません。

 

2.なぜ契約書が必要か

フランチャイズ契約書は、本部と加盟者の関係を法的に定め、双方の権利と義務を明確化する重要な役割を担います。これがない場合、運営中に生じる問題や誤解が解消されず、トラブルに発展するリスクが高まります。例えば、ブランド使用条件、ロイヤリティの計算方法、広告費の負担割合などの重要事項を明文化することで、運営上の透明性を確保し、両者が安心してビジネスを進められる環境を提供します。

 

3.法規制の遵守

フランチャイズ契約は、中小小売商業振興法や独占禁止法などの法規制に基づいて作成されなければなりません。特に、契約締結前の情報開示義務は加盟者の信頼を得る上で不可欠です。この義務を怠ると、後に契約無効や損害賠償請求といった法的リスクを伴います。また、近年、フランチャイズビジネスモデルが多様化しており、特定商取引法で制限する業務提供誘引販売取引(51 条)に該当するフランチャイズ契約や加盟者との間で労働契約関係が疑われるフランチャイズ契約等も散見されるようになり、従来の小振法や独占禁止法以外の法規制にも目を配る必要があるといえます。

 

4.専門家の関与

契約書の作成には、弁護士や中小企業診断士などの専門家を巻き込むことが重要です。特にフランチャイズ契約書は、複雑な法的要素や経営上の配慮が必要なため、専門的な視点での確認が欠かせません。専門家の関与により、契約内容のリスクが事前に把握され、適切な修正が加えられることで、後のトラブルを防ぐことができます。

 

5.ひな形の使用リスク

契約書のひな形をそのまま使用することは、大きなリスクを伴います。業種や事業規模に応じた独自の条項を盛り込まなければ、実際の運用に適合しない内容となる可能性が高まります。例えば、飲食業と小売業では求められる契約条件が大きく異なります。ひな形を参考にしつつも、自社に最適化された内容を設計することが不可欠です。

 

加盟者と本部双方の立場を反映した設計の重要性

1.本部が使える契約書作る

①チェーンのビジネスモデルを反映すること
契約書はチェーンのビジネスモデルに沿った内容である必要があります。初期投資額や個人の労働力活用、法人の組織力、そして本部の組織体制やシステムが整備されているかを考慮して作成することが求められます。

 

②実際の業務フローや管理フローに即していること
契約書は「人・物・金」の流れに基づいて作成します。例えば、人では特殊能力の必要性や本部の支援の有無、物では供給方法やロジスティクス、金では仕入代金やロイヤルティ支払いなど、直営店の運営実態に合わせて検証しなければなりません。

 

⓷本部を守るための手段を網羅すること
本部の統制力がチェーン全体の発展に不可欠であり、そのためには平時(通常時)と有事(訴訟時)の手段を準備する必要があります。ただし、これらの手段は加盟者の理解と納得を得ることが重要であり、加盟者の意見を吸い上げる仕組み(例:加盟者会や掲示板)も併せて整備することが求められます。

 

2.加盟者視点のメリット

本部の利益ばかりを考えてフランチャイズ契約書を作っていては、チェーンは長続きせず、成り立ちません。本部としては、加盟者にとっての加盟することのメリット、加盟し続けることのメリットを十分検討してフランチャイズ契約を設計する必要があります。

 

トラブル防止のための具体的な条項

フランチャイズ契約書には、トラブルを防止するための条項をしっかりと盛り込む必要があります。以下は特に重要な条項の例です。

項目 内容
a.加盟金 加盟金は、フランチャイズの付与やノウハウの開示などの対価であり、不返還条項を設ける場合は、その理由を加盟者に十分説明する必要があります。
b.保証金 保証金は、担保範囲を明確に定める必要があります。特に、契約上の債務範囲を正確に規定することが重要です。
c.ロイヤルティ ロイヤルティの対価性を重視し、加盟者が納得できるサービスを提供する必要があります。また、契約締結時には内容を明確に説明することが求められます。
d.業者の指定 業者指定は独占禁止法に違反しませんが、チェーンシステム維持の必要性を明記してください。
e.立地診断・売上予測 売上予測を提示する場合、店舗出店が加盟者の責任であることを契約書に明記し、トラブル防止に努める必要があります。
f.テリトリー制 テリトリー制度を導入する場合、条項の適用方法や違反時の対応策を事前に準備してください。
g.開業前研修 研修内容や費用を契約書で明示し、追加研修が必要な場合の対応を規定してください。
h.経営指導 指導の種類や方法を契約書に記載し、SV派遣の頻度なども可能であれば具体的に定めてください。
i.運営規律 本部の指示や規律に従うことを明記し、風評被害防止のための具体的規定を設けてください。
j.商標管理 商標使用の範囲や条件を明確にし、違反時の違約金条項を規定してください。
k.秘密保持義務 ノウハウを営業秘密とする規定を設け、関連するマニュアルの管理を徹底してください。
l.競業避止義務 秘密保持義務を補完し、本部の営業権を守るための条項を設定してください。
m.違約金 違約金の額や範囲を適切に設定し、損害賠償請求の可否を契約書に明記してください。
n.契約期間 加盟者の投資回収期間を考慮し、自動更新条項や更新時の新契約への切り替えも視野に入れてください。
o.解除事由 重大な契約違反などに対し、本部が契約解除できるよう解除事由を列挙してください。
p.契約終了後の措置 契約終了後の返却物や対応を明記し、未対応時の措置を規定してください。
q.連帯保証人 保証範囲や極度額を定め、契約時に債務範囲が特定されていない場合にも対応できるよう規定してください。

法定開示書面の概要

1. 必要性と目的
法定開示書面は、小売業や飲食業を含むフランチャイズ本部が加盟希望者に対して提供すべき重要な情報を開示する文書です。これにより、加盟希望者が十分な判断材料を得られ、透明性のある契約が可能になります。

 

2. 開示内容
法定開示書面には、以下の項目が含まれます:

金銭に関する事項:加盟金や保証金などの額や性質、支払い方法、返金条件。
商品の販売条件:提供商品や決済方法。
経営指導:研修の有無、内容、指導の方法や頻度。
商標や商号の使用条件:使用許諾の範囲と条件。
契約期間および解除:契約期間、更新条件、解除手続きや損害賠償の算定方法。
加盟店舗の状況:既存加盟店の店舗数や収支状況(類似条件の店舗の収支を含む)。
その他の情報:フランチャイズ本部の基本情報や財務状況。

 

3. 改訂点
2022年の法改正により、本部は立地条件が類似する既存店舗の収支に関する情報の開示が義務化されました。この情報には売上高、売上原価、ロイヤリティ、人件費、一般管理費などが含まれます。これにより、加盟希望者が店舗の収益構造をより正確に把握できるようになりました。

 

4. 注意点
法定開示書面はフランチャイズ契約書と異なり、法的拘束力を持たないため、加盟者を義務付けることはできません。しかし、契約書を補完する重要な役割を果たします。
本部が提示する収益シミュレーションや収支モデルとの整合性を確保することが重要です。

 

5. 作成時のポイント
他のフランチャイズ本部の事例を参考にすることで、実効性の高い文書を作成できます。
公正取引委員会のガイドラインや裁判例を踏まえ、矛盾のない内容に仕上げることが求められます。

 

参考資料
「JFAフランチャイズガイド」には、日本国内の主要なフランチャイズ本部の法定開示書面が掲載されています。文書作成時の参考として活用できます。

 

まとめ

フランチャイズ契約書は、単なる形式的な文書ではなく、本部と加盟者の関係性を構築し、事業の成功を支える重要な基盤です。適切な設計を行うことで、双方が安心して事業に取り組むことができ、長期的な成長が期待できます。本部構築を検討中の企業は、ぜひ専門家の助言を受けながら、自社に最適な契約書を作成してください。

 

詳しいサポートやご相談は、当社までお気軽にお問い合わせください。

若林和哉

早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業や飲食業など複数の中小企業の経営企画部にて、予実管理や新規事業立ち上げ、M&A、FC加盟店募集、独立支援制度構築などを経験。2021年独立後は、事業計画策定や補助金申請支援、創業支援などのコンサルティング、日本経済新聞主催フランチャイズショーや(一社)日本フランチャイズチェーン協会でのセミナー講師を担当している。

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