フランチャイズ事業を始めるとなると、多くの人が「店舗をどう展開するか？」に注目します。どの立地が良いか、どれくらいの規模でスタートするか、加盟店をどう募集するか……確かに、どれも大事なポイントです。

でも、ちょっと待ってください。フランチャイズ・ビジネスにはもう一つ、成功に欠かせない要素があります。それは「本部の役割」です。

本部の役割とは、ただ「加盟店を増やすこと」ではありません。むしろ、加盟店に商品・サービスやその販売ノウハウを提供し、効率よく運営できる環境を整えることです。そして、それを支えるのが 情報システム なのです。

このコラムでは、情報システムの必要性、導入の方法、さらにその活用までを見ていきます。

情報システムって何をするの？

例えば、あなたがフランチャイズ形式のカフェを運営しているとします。あるお客様が「この間、別の店舗で飲んだオリジナルドリンクが美味しかったから、また注文したい」と言ってきました。ここで、別の店舗のメニュー情報や顧客履歴が共有されていなかったらどうでしょう？スタッフが困ってしまうだけでなく、お客様の期待を裏切ることにもなりかねません。

情報システムは、このような問題を解決するためのものです。具体的には以下の役割を果たします：

・顧客サービスの統一
どの店舗でも同じ品質・操作でサービスを提供することができます。例えば、オンライン予約や会員情報の共有がその一例です。「どの店舗でも同じサービスが受けられる」という安心感をお客様に与えることができます。

・業務の効率化
加盟店が独自に試行錯誤するのではなく、本部が提供するノウハウに基づいて効率的に運営できる仕組みを作ります。これにより、加盟店が本来注力すべき「お客様対応」や「現場運営」に専念できるようになります。

・加盟店の状況把握
本部がリアルタイムで各店舗の売上や在庫を把握することで、必要に応じて適切なアドバイスやサポートが可能になります。また、全体のデータを分析し、新しい施策を考える材料にもなります。

情報システムは、フランチャイズ事業の運営を効率化し、顧客サービスの質を統一するだけでなく、本部と加盟店の関係をより強固なものにします。これにより、顧客満足度の向上や事業全体の成長を後押しします。

「どの店舗でも同じ体験を提供したい」「加盟店の運営をもっとスムーズにしたい」と感じたとき、それを実現する鍵が情報システムです。ただし、システムは導入するだけでは効果を発揮しません。本部が目的を明確にし、加盟店と協力して運用することで、初めてその力を活かすことができます。

情報システムは、フランチャイズ運営のスムーズさや顧客満足度の向上に不可欠なツールです。どの店舗でも一貫性のあるサービスを提供し、加盟店の運営を効率化することで、フランチャイズ全体の成長を支えます。

どんなシステムがあるの？

「情報システム」と一言で言っても、その種類はさまざまです。以下は具体的な例です：

・マーケティング系システム
クーポン配布や顧客属性に基づいたレコメンド発信など、顧客との接点を増やすためのツール。

・販売・精算系システム
セルフレジやタブレット注文など、業務の効率化を図るもの。

・人材管理系システム
勤怠管理やシフト作成ツール。スタッフが増えるにつれ、こうしたツールの重要性が増します。

・業態別システム
飲食店での配膳ロボット、小売店での行動分析カメラ、サービス業での予約管理システムなど、業種に特化したものもあります。

どうでしょうか。みなさまも、近所のレストランでの注文用タブレット、配膳ロボットやスーパーのセルフレジなど利用されたこともありますよね。さらに、社内でも勤怠管理システムに休暇を登録したり、データの共有などグループウェアが利用されていますよね。

では、どれから導入すれば良いでしょうか。それは、フランチャイズの事業内容によります。あなたのフランチャイズの経営理念はなんでしょうか 。せっかく店舗が拡大してお客様が増えたのにサービス品質が低下することでブランドが棄損されてしまいます。

そして、もう一点。加盟店・店舗を増やした時に運営のボトルネックとなるところはどこでしょうか。加盟店という新しい組織を管理したり、スタッフも倍々と増えていきます。本部・加盟店でも今は人材不足です。せっかくこのフランチャイズを選び、働いてくれる仲間のためにも、気持ちよく働ける環境を整えていきましょう。

情報システムは、マーケティングや販売、人材管理、業種特化型ツールなど多岐にわたります。まずはフランチャイズ事業における課題や経営理念に基づいて、優先度の高いシステムから導入を進めましょう。

情報システムを導入する際の注意点

ただし、情報システムの導入には時間と費用がかかります。また、導入そのものがゴールではありません。最初にしっかりと計画を立てることが成功のカギです。以下に示す内容を考慮して、「システム要件」として取りまとめ、システム会社と協力して導入していきます。

目的と目標を明確にする
何のために導入するのか、どのような効果を期待するのかを明確にします。

優先順位をつける
必要なシステムを全て一度に導入するのは難しい場合が多いです。まずは最も重要なものから始めましょう。

費用と期間を考慮する
システム導入には初期費用だけでなく、運用コストもかかります。それを見越して計画を立てることが大切です。

「情報システムは分からない」「専門外だから」とシステム会社に丸投げしてしまうのは避けましょう。たしかに、システムの設計やプログラミングといった技術的な部分は専門家の仕事です。しかし、情報システムはあくまで目的を実現するためのツールでしかありません。

何を目的にするのか、どのようなシステムが必要なのかを決めるのは経営者や運営者の役割です。これらは外部の専門家には分からない部分です。ぜひ、自分事としてしっかりと計画を立て、プロジェクトを進めることが重要です。

情報システム導入後の活用と改善

情報システムは導入して終わりではありません。むしろ、運用が始まってからが本番です。以下のポイントを意識して、システムを最大限活用しましょう：

1.データを活用して改善を続ける
情報システムが提供するデータは、経営や運営の改善に活用できます。例えば、売上データから人気商品の傾向を分析したり、顧客データを基にターゲットを絞ったマーケティングを展開したりすることが可能です。データは活用することで価値を生むため、システムが集める情報を積極的に分析・活用しましょう。

2.スタッフの教育とサポートを行う
新しいシステムは、スタッフにとって最初は使いづらく感じることがあります。スムーズに運用できるよう、システムの使い方をしっかり教育し、サポート体制を整えることが重要です。

3.定期的な見直しとアップデート
ビジネス環境や顧客ニーズの変化に応じて、システムも進化させる必要があります。定期的にシステムを見直し、必要に応じてアップデートを行うことで、常に最適な状態を維持できます。

情報システムの導入は、フランチャイズ事業の効率化や成長の第一歩に過ぎません。導入後にそのデータを活用し、運用を支えるスタッフを育成し、環境の変化に応じて柔軟に見直していくことが、システムを真に価値あるものへと変える鍵です。

経営者や運営者が主体的にシステムを活用し、改善を繰り返すことで、競争力のあるフランチャイズ運営が可能になります。情報システムを土台として、常に進化し続けるフランチャイズ事業を目指しましょう。

まとめ

情報システムはフランチャイズ事業における「縁の下の力持ち」です。一見すると目立たない存在ですが、長期的に見れば、加盟店の成功や顧客満足度の向上、本部の運営効率化に大きく寄与します。

「まだ店舗が少ないから情報システムは必要ない」と思うかもしれません。しかし、店舗数が増えるにつれて課題が顕在化することも多いです。フランチャイズ本部の構築を計画する際には、ぜひ情報システムの導入も検討してみてください。きっと、未来の成功を後押ししてくれるはずです。