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【最新FCトレンド|飲食業】外食業界の人材確保,生産性向上への取り組み(2018.4.30)

外食業界では,正規雇用の従業員だけでなくパート・アルバイトも採用難で,現場のオペレーションは厳しい状況です。さらにブラック問題など労働環境への対応も世間から厳しい目を向けられており,残業代や社会保険料などのコスト要因が利益を圧迫する結果となっています。そのような状況の中,外食チェーン企業は政府の唱える「働き方改革」を積極的に推進し多様な労働形態の整備をすることで人材確保に努めているようです。

ジョイフルは4月から,パート・アルバイトの定着率を高めるため全パート・アルバイトを期間の定めのない無期限雇用に切り替えます。担当者いわく,「雇い止めの不安を無くし安心して働いてもらえる環境にしたい」ということです。また,ドトールコーヒーは,2017年9月に非正規従業員向けの退職金制度を導入しました。ドトール側が毎月100円の掛け金を負担,従業員側は毎月給与の10%以内で積み立てができるというものです。大林会長は,「従業員の方に喜んでもらいたい」と語っています(日経MJ:2018/3/2:13P)。

サガミチェーンは,出産後の育児休業から復帰した女性社員を対象とした,育児奨励金制度を導入しました。子供が1歳未満だと月額15,000円,1~2歳未満は10,000円,2~3歳未満は5,000円が支給されます。近年の新入社員における女性割合は4割程度となっており,今後のために必要な環境整備であるとしています。ブロンコビリーは,営業時間の短縮で社員の負担軽減を図ります。店舗の閉店時間を30分から1時間繰り上げるなどして,短縮営業によるアルバイト確保と,社員の急な出勤などの負担を軽減する狙いです(日経MJ:2018/4/13:13P)。

すかいらーくは,チェーンの3000店を対象に約10万人いるパート・アルバイトが所属とは別の店舗で働ける仕組みを立ち上げるため,ITシステム導入に100億円を投資します。接客マニュアルをグループでほぼ統一し,パート・アルバイトがスマホでマニュアルの動画を見られるようにすることで、早期の戦力化を目指します。従業員にとっては働く場所と時間の選択肢が広がり働きやすくなるので,人材の定着化と効率化が期待されます(日経朝刊:2018/3/25:3P)。

また同社は,パート・アルバイトへの応募を検討している主婦向けに相談窓口「おしごとコンシェルジュ」を設けました。10万人のパート・アルバイトの3割が主婦であることから,主婦が応募しやすく働きやすい職場環境を整備するのが急務であるとしています(日経MJ:2018/4/6:13P)。

串カツ田中は,新入社員とトレーナーだけの研修センター店舗を都内にオープンさせました。メニューは同じですが,研修センター店なのでドリンクは216円均一と割安になっています。一カ所での集中研修によりトレーニング効果が向上するだけでなく,同じ時期にトレーニングしたという「同期の絆」ができることが離職率低下につながると期待されています(日経MJ:2018/4/20:13P)。

飲食店支援のシンクロ・フード(東証1部)は,外国人専用の飲食求人サイトを開設します。留学生のアルバイトだけでなく,就労に制限がない外国人永住者などの正規雇用にも対応したサイトで,人手不足に悩み,またインバウンド対応の外国人スタッフを求めている外食チェーンでの需要を見込んでいます。サイトのサービスはまず英語から始め,順次ベトナム語、中国語、韓国語と対応言語を拡げていく計画です(日経MJ:2018/4/23:13P)。

山岡 雄己
中小企業診断士
山岡 雄己
コラム著者のご紹介

1965年松山市生まれ。京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て2002年独立。フードビジネスに強いFCコンサルタント。経営戦略策定からプロトタイプ開発、FCパッケージ開発まで、広範に本部構築を支援する。ぐるなび大学、日経FCショー講師、日経リポート執筆等、講演執筆多数。法政大学経営大学院 兼任講師。