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【最新FCトレンド|飲食業】フルサービス型喫茶店のリバイバル

ここ最近,コメダ珈琲店に代表される「フルサービス型喫茶店」の情報をよく目にします。コメダHDの2018年3~8月(2019年2月期の半期)の連結決算では,純利益24億円(前年同期比6%増),売上収益は148億円(同14%増)で,いずれも過去最高でした。新業態も含めたコメダHDのチェーン店舗数は831店で,大半をFC加盟店が占めています(日経朝刊:2018/10/11:P15)。

一方,ドトール・日レスHDの「星乃珈琲店」は全203店が直営店で,2018年3~8月の売上高は79億円にまで成長しています。これは,同社主力ブランドである「ドトール」の80億円に並びます。ちなみに,ドトールは全1122店のうちの83%がFC加盟店となっています(日経MJ:2018/10/22:P13)。また同社は,星乃珈琲店よりもさらに高級路線の「神乃珈琲店」の業態開発を始めており,銀座に続いて京都に2店舗目を出店しました(日経MJ:2018/10/17:P13)。古民家のような落ち着いた店内で,一杯ずつサイフォンで淹れたこだわり珈琲をゆったりと楽しんでもらう,古き良き日本の純喫茶を思わせるコンセプトになっています。

その他,すかいらーくは「むさしの森珈琲店」を2019年中に50店舗まで増やす予定,すかいらーく創業者の横川竟氏は「高倉町珈琲店」をFC方式で店舗展開する方針,キーコーヒーも銀座ルノアールと提携して「ミヤマ珈琲」をFC方式で増やしていく計画と,「フルサービス型喫茶店」のブランドは乱立気味の気もしないではありません。

もともと,団塊の世代は煙草を吸いながらゆっくりコーヒーが飲める喫茶店に馴染んでいましたが,1980年代にセルフ式で低価格のドトールが登場,バブル期でゆっくりしている暇もないビジネスマンにそのスタイルが支持されました。そして1996年にシアトル型の「スターバックス」が日本上陸し,セルフ式でありながらゆったりと時間を過ごせるサードプレイス(スターバックスのコンセプト)としてのカフェが増えてきました。そして今,団塊の世代がシニア層となって,昔懐かしい「フルサービス型」を求めているのではないか,と分析するむきもあります。

富士経済の統計によると,喫茶店の市場規模はおよそ1兆4000億円程度とされています。その中でドトール型低価格業態が1000億円,スターバックスのようなシアトル型セルフ式コーヒーショップが3000億円,コメダのようなフルサービス型喫茶店で全国規模のチェーンは1000億円程度で現在伸長中,と推測されます。その他のプレイヤーとしては,UCCがファンドに売却した「珈琲館」チェーン(店舗数約300店)のようなコーヒー専門店,サンマルクカフェのようなベーカリーカフェなどがあり,最近ではコンビニカフェも競合として捉えることができるでしょう。マーケットとしては伸長している喫茶店・コーヒーショップ市場ではありますが,業態やブランドの主役が入れ替わることも,大いにありそうです。少子高齢化でシニア世代の活躍が待望される時代,果たしでどの業態・ブランドが生き残るのか,これからの「フルサービス型喫茶店」の動向から目が離せません。

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山岡 雄己
中小企業診断士
山岡 雄己
コラム著者のご紹介

1965年松山市生まれ。京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て2002年独立。フードビジネスに強いFCコンサルタント。経営戦略策定からプロトタイプ開発、FCパッケージ開発まで、広範に本部構築を支援する。ぐるなび大学、日経FCショー講師、日経リポート執筆等、講演執筆多数。法政大学経営大学院 兼任講師。