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フランチャイズの成否を分けるスーパーバイザーの「聞く力」

スーパーバイザー(SV)は本部と加盟店をつなぐ架け橋であり、フランチャイズ・システムを機能させるための重要な役割を担っています。そのSVに求められる機能として、次の5つを挙げることができます。

①コミュニケーション(意志および情報の伝達)

本部と加盟店の意志をつなぎ、本部で集めた情報を取捨選択して、個々の加盟店に有効な情報に整理したり加工したりして分かりやすく伝える機能です。

②コンサルテーション(経営相談および指導)

加盟店の利益を最大にするための経営相談および指導等の機能です。開業直後の立ち上げや、競合出店や市場環境の変化に伴う業績悪化時などは、特にSVの経営分析と指導が重要になります。

③コーディネーション(調整)

本部にある店舗開発、商品部、トレーニング部、経理部、法務部などと加盟店の要望や問題を調整する機能です。

④カウンセリング(個人的相談)

開業して独立した事業主になると、経営上の個人的な不安や悩みを相談することのできる相手が少なくなります。人は不安を多く抱えていると、そのことがいつも頭から離れず、仕事に身が入らなくなるものです。その不安を取り除くための機能です。

⑤コントロール(統制)

フランチャイズ・システムとは独立した経営者同士がフランチャイズ契約を結び、お互いの義務と責任を明確にし、信頼関係をもとに事業を継続的に営む関係です。その義務と責任が遵守されているかどうかを確認する機能です。

この5つの中で、私が重要視しているのは「コミュニケーション」です。それも、加盟者の話を「聞く力」が最も重要だと考えています。なぜなら、SVは仕事の中で加盟者を説得しなければいけない場面にたびたび遭遇します。しかし、レギュラーチェーンではないため、指示・命令をすることはできません。そこで、必要になるのが“説得点”を探すための「聞く力」です。

ある大学のコミュニケーションのテキストに、説得に関して次のような定義がありました。

「説得とは、言葉の力を最大限活かして、話し手が求める行為を、聞き手が自発的に取るよう働きかけることである。効果的な説得とは、聞き手のニーズに応えることから始まる」

つまり、相手を説得しようと思うならば、まず説得しようとしている問題や課題に対して、相手がどのように考えているのかを聞かなければいけません。そして、相手の話の中から、自分が考えている問題や解決策との共通点を探すことが必要となります。

この共通点を『説得点』と言います。

説得点を見つけ出すことができれば、そこから一緒に問題を明確にしたり解決策を考えたりしやすくなるため、相手も納得して行動を起こしてくれる確率が高くなります。

これは、一方的に商品をお薦めするのではなく、まずお客様の来店動機や商品に対するニーズを十分聞きだしてから、マッチングする自社(自店)の商品をお薦めしている有能な営業マンのコミュニケーション・スキルと同じなのです。

石川 和夫
中小企業診断士
石川 和夫
コラム著者のご紹介

1958年 栃木県宇都宮市生まれ。法政大学経済学部卒。㈱セブン-イレブン・ジャパンで店舗指導員として7年間勤務。のち、コンビニ3店と伊レストラン2店を経営する会社の統括マネジャー。現在は人材育成コンサルティング、コーチングを活用したコミュニケーション研修、スーパーバイザー教育、執筆を中心に活動。