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コラム

【最新FCトレンド|飲食業】外食業界におけるM&A事情(2017.8.31)

今月は,成長戦略として, M&Aがどのように外食チェーンにおいて取り入れられているに着目しました。M&Aといえば,以前は大手チェーンにしか馴染みのないもの捉えられがちでしたが,最近では中小の独立系チェーンにおいても,事業再編の手段として盛んにM&Aが行われるようになっています。政府系金融機関である日本政策金融公庫では,3年ほど前から事業承継等に伴うM&A資金についても融資ができるようになりました(以前は,事業譲渡=事業の売買は融資の対象でしたが,資本政策=事業ではなく会社ごと買収するようなケースは融資対象外とされていました)。

それでは,この1年の外食チェーンにおけるM&Aの案件を見てみましょう。

2017-08-22 ピックルスコーポレーションが子会社を個人に譲渡

2017-08-16  サーベラス・グループ、西武ホールディングスの全株式を売却

2017-08-09 「すためしどんどん」運営のガーデンが肉寿司を子会社化

2017-07-28 「かつや」運営のアークランドサービスがバックパッカーズの66%株式を取得

2017-06-29 ユニー・ファミマHD、カネ美食品を子会社化 中食の品質向上目指す

2017-06-27 「はなの舞」のチムニー、マルシェと資本業務提携

2017-06-22 ヴィレヴァン、フード事業を分割 経営資源を本業に集中

2017-06-15 飲食店経営のバルニバービが菊水を連結子会社化

2017-06-14 総合商研がグリーンストーリープラスを子会社化

2017-04-27 ダイヤモンドダイニング、商業藝術の全株式を18億円で取得し子会社化

2017-04-17 TBIHD、ホリイフードサービスへTOB

2017-04-03 グルメ杵屋 、銀座田中屋の全株式を取得し子会社化

2017-02-14 梅の花、サトレストランのすし半事業を譲受

出所:M&Aキャピタルパートナーズ HPより転載
(http://www.ma-cp.com/news/search2.php?d=13)

一部上場企業である「グルメ杵屋」が,老舗蕎麦屋の「銀座田中屋」を買収したケースが載っています。銀座田中屋は3店舗経営の中小企業ですが昭和43年創業の老舗であり,規模の経済の追求ではなくブランド価値にシナジー効果を期待した買収なのであろうと解されます。

「かつや」のアークランドが「野菜を食べるカレーcamp」のバックパッカーズの主要株主になったのも興味深い案件です。フランチャイズ展開している「野菜を食べるカレーcamp」は,JR東日本系列の日本レストランエンタプライズと,メガジーであるセント・リングスが主たる加盟社となって店舗展開をしています。かつ丼とカレーがどのようなシナジー効果を生むのか,商品開発だけではなく加盟店開発の面からも注目されます。

2015年10月にマザーズ上場したバルニバービが,京都の老舗旅館「菊水」を買収した案件も見られます。バルニバービは,串業態などを運営する「リアルテイスト」(直近期年商11億円)の買収も発表しました(日経MJ:2017/8/20:15P)。上場後,M&Aによる成長戦略に積極的に舵を切っているように見受けられる,バルニバービの今後の動きに注目したいところです。

また今月は,「元町珈琲」を運営するスイートスタイルがブレッドカフェ業態を始めるという記事がありました(日経MJ:2017/8/16:15P)。スイートスタイルは,2017年4月にミツウロコHDの子会社となっており,3年前に米国大手ハンバーガーチェーンのカールスジュニアのライセンス権を買い取って日本展開を始めたミツウロコHDにとって,外食部門を強化するためのM&Aであったようです。

 

ところで,M&Aでは買収先の企業価値を算定するために,いくつかのDD(デューデリジェンス)を行います。企業が適法に運営されているかを精査するために弁護士等が法務DDを行い,税務リスクの有無を調査し現時点での財務的な企業価値を算定するために公認会計士等が財務DDを行います。

そして,これらに加えて,「過去に付加価値を生み出した仕組みがそのまま将来も価値を生み出し続けるか」を予測するビジネスDDが行われます。またビジネスDDでは,買収によりシナジー効果が得られるかを見極めることが大切で,買収先のポテンシャルを評価するのと同時に,内部統制システムの成熟度やマッチング度合いをスコアリングする必要もあります。具体的には,評価・教育・報酬・キャリアパスなど人事制度の構造,ロジスティックにおける設備やシステムの充実度,利益管理の精度・速度・仕組み,情報システムの導入状況など,およそ「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源のマネジメントの実態を把握しなければなりません。これらのレベルは高ければいいのかというとそうでもなく,買収側とのレベルとのギャップが小さいほうが買収後の事業統合(PMI=Post Merger Integration)を容易にさせることは想像に難くないでしょう。また,企業文化や風土の違いもPMIに影響があるので,そういった定性的な面も総合的に評価してM&Aの意思決定をするのが望まれます。

残念ながら,成長戦略の一手段としてM&Aを捉えるのではなく,成長スピードにこだわるあまりM&Aありきで節操なく買収するケースもあり(特にIPO直後に調達した資金をM&Aに使いがち),ビジネスDDがおろそかになって結果的に高い買い物になる恐れもあります。

我々チェーンビジネスにかかわる経営コンサルタントは,このようなビジネスDDにこそ力を発揮できる存在であるべきと,襟を正さずにはおられません。

山岡 雄己
中小企業診断士
山岡 雄己
コラム著者のご紹介

1965年松山市生まれ。京都大学文学部卒。サントリー宣伝部を経て2002年独立。フードビジネスに強いFCコンサルタント。経営戦略策定からプロトタイプ開発、FCパッケージ開発まで、広範に本部構築を支援する。ぐるなび大学、日経FCショー講師、日経リポート執筆等、講演執筆多数。法政大学経営大学院 兼任講師。

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